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ジャンルキ










#ジャンルキ







 その男の子はずっと自分は女の子だと思っていました。父親から与えられる様々な可愛いいドレスがとても好きで、自分を可愛いく着飾る事が何より好きで、母の口紅を鏡の前でこっそり付けてみた事もありました。
けれどそんな自分が幼いながらもおかしいと思うようになりました。女になりたい。そんな事を思う自分を否定したくてしたくて、途中から男の子は頑張って逞しくなろうと、反発するように身体を鍛えて、女の子ともいっぱい付き合って、来るもの拒まず去るもの追わずな生活を送るようになりました。けれどそんな生活をしていても、ふと街中で歩いていて心惹かれるのは、カラフルなドレスや、きらびやかな宝石。ショーウインドウに飾られたそれらを、道端であるにも関わらずジッと見つめてしまう事もありました。着てみたい、付けてみたい。けれどそんな欲求が自分の中にある事が、ひどく嫌で、気持ち悪くて、誰にも知られたくなくて、男はそれを女への貢ぎ物としての口実に使うようになりました。自分の代わりに、女を磨いて、綺麗にして。その女に見合うように自分の身なりも、より男らしく、よりコーサ・ノストラのマフィアらしく。そして男は口癖のように、ある言葉を口にするようになりました。
「俺に惚れない女なんていない。」
その言葉は男にとって、本来の自分自身への精一杯の抵抗だったのでしょう。








「けど、俺の前では我慢しなくて良いんだぜ、ルキーノ?」

ジャンは、にっこりとそう言って笑うと、どっから調達してきたのか解らない真っ赤なドレスや純白のメイド服そのた諸々を抱えて、男−ルキーノ・グレゴレッティーに迫った。ヒクリと口許をあげ、こめかみをひきつかせて、ルキーノは憮然とした表情で、ジャンを見下ろした。

「どういうつもりだ?」
「どういうつもりって、ルキーノの予測通りだと思うぜ?」
「ふざけるな。何なんだ冒頭の話は!勝手に人の過去も性癖も捏造するな!」
「えー、我ながら上手い話だと思ったのによー。」

ちぇ、ルキーノ心狭ぇーなぁーと、ふて腐れた顔をしたジャンに、眉間の皴をさらに深くさせると、ジャンのその頬をルキーノはおもいっきりつねった。

「お前はぁー・・どの口がそんな事を言うんだ、この口か?アァ?少しも悪いと思ってねぇーだろ、お前。」
「いはい、いはい、はなひて、ルキーノしゃん。(痛い、痛い。離して、ルキーノさん。)」

暫くして、仕方ないといった気持ちでルキーノはジャンを離すと、つねられた箇所をジャンは手で擦りながら、だってなぁーと。ルキーノに視線をやった。

「俺、こういうカッコしたルキーノ見てぇーんだもん。いいじゃん、減るもんじゃないしよ。」
「似合わんと解りきってるもんを、何故着なきゃならん。服はそいつに似合ってこそ、着る価値のあるもんであってな。」
「着ないと、似合うとか似合わないとかって解らねぇーだろ。」
「絶対似合わん。」
「いいから。着ろよ。」
「着ないと、言ってるだろ。」
「なぁ、ルキーノォー。」
「甘えた声出しても、今回ばかりは駄目だ。」
「なぁ。」
「くどいぞ。」

頑として譲らないルキーノの姿勢にジャンもカチンときた。

「解った。ルキーノ。」
「そうか、解ってくれたら・・」
「そうくるんだったら、いい。カポの特権。着ろよルキーノ。命令。」
「つっ!?な、ジャン!」
「上のものには、絶対服従。そうだろ、二席幹部殿?」

挑発的に笑うジャンに、ルキーノは瞠目する。そして暫くして、ジャンの抱えたそれらの中から、赤いドレスを乱暴にひったくった。

「・・・・後で覚えてろよジャン。」

ドレスを片手に抱えながら、低い声でそう唸り、クルリと更衣室へと向かうルキーノに、ククッと、ジャンは笑った。あぁ、これだから俺が調子に乗っちまうって事、解ってんのかね?

「後でって、どういう事やってくれんのかね、俺の可愛いいライオンちゃんは?」

まぁ、どっちにしろ。仕事で疲れた俺へのご褒美には変わりないな。と、あのドレスを着たルキーノの反応を想像しながら、ジャンは、椅子に腰かけると、愛しの彼が出てくるまで一服でもしてるかと、タバコを指先で摘んだのであった。



<似合う似合わないなんて、関係ない。どんな無理難題でも俺の言う事ならなんだかんだ言いつつ応えてくれる彼、困らせたいと思ってしまう彼、俺に対していっそいじらしいくらいの彼。そんなあいつを、何時だって何度だって見たくなるだけなんだ。>








赤髪少女の救済

END







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